江副 浩正|リクルート創業者・「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」

江副 浩正氏の肖像イラスト。リクルート創業者として情報誌ビジネスを発明、社訓「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」を掲げた起業家としての姿を象徴する人物紹介アイキャッチ。
起業家

江副 浩正えぞえ ひろまさ

1936年6月12日 — 2013年2月8日(76歳没)

株式会社リクルート 創業者

日本における「情報の商品化」という発想を初めて事業化し、求人広告誌『企業への招待』を起点として、就職・住宅・中古車・結婚・旅行・飲食など生活のあらゆる領域に情報誌ビジネスを広げた起業家。創業10周年に発足させた「リクルートスカラシップ」と社訓「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」に象徴される、人材育成と機会創出を経営の根幹に据えた経営者でもある。

編集メモ

江副 浩正という名前は、戦後最大級の汚職事件「リクルート事件」の主犯として記憶されることが多い。事件そのものは司法で決着がついた事実であり、ここでも年表に書く。

ただし、事件の手前にあった経営史的な発明——「情報を商品化する」というビジネスモデル、個人と企業をつなぐ「リボンモデル」、社員一人ひとりに自律を求める経営理念とモットー、そして「リクルートマフィア」と総称されるほどに多方面へ起業家を送り出した人材輩出企業としての設計——を、事件の影に置いたままにするのはもったいない。

本ページは、本人著書『かもめが翔んだ日』『リクルートのDNA』、リクルートホールディングスおよび江副記念リクルート財団の公式情報を根拠に、江副 浩正という起業家の輪郭を、事実ベースで立項し直すことを編集の目的とする。

略歴

  1. 1936年大阪府大阪市天王寺区に生まれる。後に豊中市立克明小学校から甲南中学校・高等学校へ進む。
  2. 1960年3月東京大学教育学部教育心理学科を卒業。在学中は東京大学新聞の広告営業を担当し、求人広告のビジネス可能性に着目していた。同月、求人広告事業を行う「大学新聞広告社」を個人創業。森 稔が経営する第2森ビル屋上の仮設事務所を起点に事業を始める。
  3. 1960年10月会社組織として「株式会社大学広告」を設立。
  4. 1962年大学生向け就職情報誌『企業への招待』を創刊。後の『リクルートブック』の前身となる。
  5. 1963年4月商号を「株式会社日本リクルートメントセンター」に変更。同年8月、株式会社日本リクルートセンターを設立し事業を移管。
  6. 1971年創業10周年を機に、返済不要の給付型奨学金制度「リクルートスカラシップ」を発足。
  7. 1976年リクルートからの基金寄附により財団法人「江副育英会」を設立(後の公益財団法人江副記念リクルート財団)。
  8. 1976年住宅情報誌『住宅情報』を創刊。以後、就職・転職・住宅・中古車などライフイベント領域への媒体展開が続く。
  9. 1984年社名を「株式会社リクルート」に変更。
  10. 1988年1月株式会社リクルート代表取締役会長に就任。
  11. 1988年6月子会社リクルートコスモスの未公開株を政界・官界・財界の関係者に譲渡していたことが報道され、いわゆる「リクルート事件」が発覚。同年、会長を辞任。
  12. 1989年2月贈賄罪で逮捕。リクルート裁判はその後14年にわたり、開廷数は322回に及んだ。
  13. 1992年ダイエーがリクルート株の約10%を取得し、リクルートはダイエー傘下に入る。江副は保有株の売却益に対する納税額により、この年の高額納税者公示で全国1位に。
  14. 2003年3月東京地裁で執行猶予付き有罪判決。同年10月、自伝『かもめが翔んだ日』を朝日新聞社から刊行。
  15. 2007年『リクルートのDNA 起業家精神とは何か』を角川書店から刊行。
  16. 2013年2月8日東京都内で死去。76歳。

関連組織

株式会社リクルートホールディングス

創業:1960年3月31日/設立:1963年(株式会社日本リクルートセンター)/本社:東京都千代田区

江副 浩正が1960年に「大学新聞広告社」として創業した会社の系譜にある現在の持株会社。1963年に日本リクルートセンターとして法人化、1984年にリクルートへ社名変更を経て、現在はHRテクノロジー事業(Indeed、Glassdoor等)とマッチング&ソリューション事業(SUUMO、ホットペッパービューティー、じゃらん、リクナビ等)を展開する。

公益財団法人江副記念リクルート財団

奨学金制度発足:1971年/前身財団設立:1976年(江副育英会)/現名称:2019年3月30日

江副が株式会社リクルート創業10周年の1971年に「社会への貢献」を目的として発足させた返済不要の奨学金制度「リクルートスカラシップ」を運営する財団。1976年にリクルートからの基金寄附で財団法人江副育英会として設立され、2012年に公益認定、2019年に現名称へ。器楽・スポーツ・アート・学術の4部門で、世界に挑戦する若者の留学・活動を支援している。

株式会社ラ ヴォーチェ

設立:2001年

江副が長年のオペラ愛好を背景に設立したオペラ興行団体。オペラ歌手の支援とオペラ公演の振興を行う。江副は本会社設立に先立ち、藤原歌劇団の理事長も務めた。

代表的な著書・提唱概念

提唱概念・社訓

自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ。

出典:株式会社リクルート 社訓(江副 浩正『リクルートのDNA 起業家精神とは何か』角川書店、2007年所収)

ピーター・ドラッカーの著書『創造する経営者』に深く感銘を受けた江副は、自身が「リクルートの経営理念とモットー十章」と呼ぶ行動指針を整え、その中心に置いたこの一文を青いプレートに印字し、社員全員の机に自ら配って回ったと、本人著書『リクルートのDNA』のなかで述べている。「機会」を待つのではなく「機会」を自分で作る、そしてその過程で自分自身を更新していくという姿勢は、リクルート出身者が業種を問わず起業家として独立していく原型となった。

主要著書

かもめが翔んだ日

朝日新聞社/2003年10月/ISBN 978-4-02-100081-2

リクルート創業から事件、裁判までを自身の言葉で振り返った自伝。

リクルートのDNA 起業家精神とは何か

角川書店「角川oneテーマ21」/2007年3月/ISBN 978-4-04-710087-9

創業期の組織づくり、経営理念とモットー十章、領域拡大の戦略と失敗を、起業家精神という観点から整理した一冊。

不動産は値下がりする! 「見極める目」が求められる時代

中公新書ラクレ/2007年8月/ISBN 978-4-12-150252-0

不動産事業に深く関わった経験を踏まえた、土地・住宅市場に対する考察。

リクルート事件・江副浩正の真実

中央公論新社/2009年10月/ISBN 978-4-12-004076-4(中公新書ラクレ改訂版:2010年8月/ISBN 978-4-12-150360-2)

リクルート事件について本人の視点から経緯と認識を記した一冊。

系譜・関連人物

森 稔(もり みのる)

森ビル創業者/東京大学新聞編集部の先輩

江副が1960年に大学新聞広告社を起業した際、森が経営する第2森ビルの屋上に仮設事務所を提供した。江副自身が自伝『かもめが翔んだ日』のなかでリクルート起業の起点として記している人物。

ピーター・ドラッカー

経営学者/江副が「書中の師」と仰いだ人物

ドラッカーの著書『創造する経営者』に感銘を受けた江副は、その経営思想を下敷きに「リクルートの経営理念とモットー十章」を策定したと、本人が『リクルートのDNA』のなかで明らかにしている。

中内 㓛(なかうち いさお)

ダイエー創業者

1992年、リクルート事件後の経営再建の過程で、ダイエーがリクルート株の約10%を取得し、リクルートはダイエー傘下に入る。江副の保有株を引き取った相手であり、戦後流通革命を率いた起業家としても江副と並ぶ存在として並列されることが多い。

このほか、リクルートは創業以来、独立して自ら起業家となる卒業生を多数輩出してきた。リクルート社内では、こうした起業家輩出の文化を、江副が掲げた社訓「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」の実装として位置づけている。

公式リンク集

出典・参考資料

  • 江副 浩正『かもめが翔んだ日』朝日新聞社、2003年10月
  • 江副 浩正『リクルートのDNA 起業家精神とは何か』角川書店「角川oneテーマ21」、2007年3月
  • 江副 浩正『リクルート事件・江副浩正の真実』中央公論新社、2009年10月
  • 株式会社リクルートホールディングス「価値創造の歴史」公式サイト
  • 株式会社リクルート「沿革・歴史」公式サイト
  • 公益財団法人江副記念リクルート財団「財団について」公式サイト
  • 『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』「江副浩正」項

この記事を書いた人

異才列伝は、記憶に残すべき人物を埋もれさせず広く紹介することを目的としたメディアです。公式情報を根拠とした信頼性の高い人物紹介を通じて、文化と記憶の継承に資することを目指しています。働き方改革協会 認定メディア/同協会SDGs推進本部 SDGs推進メディアパートナー。

目次